あのSnow Manのこと綴らせて下さい

アイドルグループSnow Manのことを綴ります

二次元ヲタ最大の憧れになるかもしれない佐久間大介

 (※「ヲタク」「オタク」と二つの表記があり、いろいろと区別についても述べられているが、個人的に親しみがある「ヲタク」を使用させていただく)

 

 

 

 

 

『魔法の天使 クリィミーマミ』の初回放送を見た時の衝撃は忘れない。

 

「へっったくそっ!!」

 

 小学生だった私は、そう思った。

 

 後から知ったが、主人公のクリィミーマミこと森沢優の声を担当した太田貴子は、この時、まったく声優経験のないまま、声をあてていた。

 多少レッスンは受けたようだったが期間が短かったらしく、当時の関係者が頭を抱えるくらいのデキだった。

 だから小学生の私が「へたくそ!」と思ってもおかしくはなかったのだ。

 太田貴子クリィミーマミの声優になったのは、彼女が『スター誕生!』というオーディション番組きっかけでアイドルデビューしたばかりだったからだ。

 なぜデビューしたばかりのアイドルに声優をやらせてみようとなったのかは知らないが、当時アイドル活動していて声優をしていた人はいなかった。声優でアイドル活動をしている人もいなかった。

 そもそも自分の姿を表に出して活動する声優はほとんどいない時代だった。(俳優と兼業という方がいるくらい。しかもほとんどはテレビではなく舞台で活躍なさっていたように思う)

 だから、ヘタなのにも驚いたし、普通は表に姿を現さない声優がアイドルとして姿を表に出すのも衝撃だった。(ヘタなのに脇役でもなく、主人公(しかも2役!)の声優として抜擢されているのも衝撃だった)

 今思うと、声優アイドルというジャンルの礎を築いたのが、この太田貴子だった。

(その後、『メガゾーン23』時祭イヴの宮里久美さん、『アイドル伝説えり子』田村えり子の田村英里子さんなどが登場してくる)

 

 私は高校生ぐらいまで、いわゆる二次元ヲタだったのだが(今も適度に読むがこの頃ほどではない)、小中学生の頃は“ヲタク”という言葉もなかったし、なんとなくアニメやマンガが好きな子は今でいう“陰キャ”という性質が強かった。周囲の扱いもひどいもので、あまりおおっぴらにアニメやマンガが好きだとは言えなかった。

 SNSなんか当然ないので同志を地味に地味に探し、やっと見つけた同志と必死に隠れながら、その時夢中になっていた作品のことを語り合い、マンガの貸し借りをしていた。

 今でこそ“ヲタク”はポジティブにも受けとめられるが、“ヲタク”という言葉が表れ始めた頃は、どちらかというとマイナスを指す単語として登場し、なんとなく“イジメてもいい対象”的な、どこか蔑むような風潮があった。

 

 しかも当時の“ヲタク”はコミュニケーション力が低い人が多かったような気がする。私自身も人前で話すのが苦手だったし、いわゆる“陽キャ”の人と授業で同じ班で活動しなければならないなどの事態に陥った時などは地獄だった。

 そんなことを強いてくる学校というところが嫌いだった。

 

 そんな“ヲタク”生活を過ごしていたから、自分がアニメやマンガが好きですとおおっぴらに言えるようになったのは、とっくに社会人になってからだった。コミケもその頃には、なかなかの規模になっていて、自分自身が活動していたわけではなかったが、知人の手伝いに行ったりしていた。(その頃はまだまだ人が少なかった……といっても、幕張メッセが会場になったばかりの頃だったから、そこそこはいたんだと思うけど、入場も購入も並んだ記憶はないのよね。コスプレしている人もあまりいなかった……気がする)

 アニソンも有名アーティストが主題歌を担当することが増えて、アニメやマンガ、そしてそれを愛する“ヲタク”も市民権を得られたように感じたものだった。

 

 

 さっくんをちゃんと認識したのは、さっくんがまだJr.で、『アウト×デラックス』に出演した時だった。

 いわゆるアウトなジャニーズJr.として紹介されたわけだが、先駆者的にキスマイの宮田くんがいたこともあって「アニメヲタク」というところに関しては、さほどひっかからなかった。(内容がおもしろくないということではないので、あしからず)

 自身を“アウト”なほど「ヲタク」だと公言するのだから、さっくんの言動は当然といえば当然ではないかと感じたからだった。

 

 

 だけど、その“声”には驚いた。

 

「アニメ声じゃん!」

 

 私はそう思った。

 

 

 はたして声優でもなく、そういった分野の専門家でもない私が思ったことだから、正しいかどうかはわからないけど、ともかく普通の男性の声とは違うという印象を持った。

 

 よく通る。

 何か突き抜けるような響き。

 ハキハキとした滑舌。

 擬音の多さ。

 声のキャラが立ってる。

 

 

 そんなことを一気に感じさせられた。

 

 

『シブヤノオト』にSnow Manが出演した時に、MCの渡辺直美ちゃんがさっくんのしゃべりを聞いて「すごい、ひとりで演技をしてるかのような……」と、そしてチャンさんが「いい声で」と評していたことからも、彼が特殊な声をしてる部類に入れてもいいと思われる。

 

 声に特徴がある人はこの世にたくさんいるが、さっくんは明らかにアニメ寄りの声だと、私に思わせた。

 

 そんなさっくんは、長年苦労してジャニーズのグループの一員としてデビューしたにも関わらず、堂々と言う。

 

「声優になりたい」

 

 私はこれにも驚いた。

 

 それは彼が本心から言ってるところがあると感じたからだ。

 

 とうとう、太田貴子の時代のように

「アイドルがアイドルとして声優をする」のではなく、

「アイドルがアイドルとしてではなく声優をする」時代が来たのだ。

 

 そう思った。

 

 それに、さっくんが今ではとても考えられないほど、学生時代は“陰キャ”で、私たちの時代の“ヲタク”に近かったという話にも驚いた。

「勉強もできない、運動神経も悪い」と。

 そうなのだ。

「学校が嫌いだった」と。

 さっくんは、まさに“陰キャ”の「ヲタク」だったのだ。

 

 そんな彼は今、照くんやふっかさんに「うるさい」と言われるくらいしゃべり、“常に笑顔のニコニコ王子”であって、運動神経の悪さはそのままだが、「アクロバット担当」と自ら言わしめるほどの存在になっている。

 

 そして何より、デビュー組のジャニーズのアイドルになった。

 

 私の時代の“陰キャ”の「ヲタク」の定義からすると、とんでもない存在だ。

 ありえない。

 そんな“陰キャ”は存在するわけないのだ。

 だって、“陰キャ”なんだから。

 

 だけど、さっくんは、きっと私が想像もつかない努力と、アニメやマンガで培った表現力と感受性で“陰キャ”から脱した。

 いや、彼はそういう意味で“陰キャ”を脱するつもりはなかっただろう。

 あくまで“Snow Man”というジャニーズのアイドルの一員となるべく行動してきたことが、そういう結果を招いただけなのだろう。

 

 

 私の周囲で“陰キャ”から逃れようとする人の多くが、アニメやマンガから離れていった、あるいは離れている素振りをした。

 そうすることが正しいことのようだった。

 そうするしか“陰キャ”からは逃れられないような気がしていた。

 

 

 だけど、さっくんはそうしなかった。

 いや、そうするつもりもないんだろう。

 

「アニメヲタク」だからこそ“陰キャ”を脱し、「アイドル」だからこそ“声優”になろうとしているのだ。

 

 私たちの時代では考えられないことだった。

 でも、憧れていた。

「アニメヲタク」でありながら“陽キャ”と認められることを。

陽キャ”となって、マウントをとってくる“陽キャ”に、アニメ、マンガ、ゲームの話を突きつけて、マウントし返すことを。

 長年、私たちがずっとできないでいたことだ。

 

 

 さっくんは今、まさにそれを実現しようとしている。

 その真っ最中だ。

 

 誰もが認めるアイドルというものを商品としているジャニーズという株式会社の“陽キャ”の象徴ともいえる「アイドル」として。

 

 AKB48の方々でアイドルから声優に転身した方はいるが、完全なるアイドルのまま声優として活動している人は、私の狭い知識ではあるが、現在いないと思う。

 

 しかし、私くらいの人間が知るくらいの知名度で、完全なるアイドルという立場で声優にならなければ、それは「アイドルでありながら声優」とは言えないと思うのだ。

アイドル声優”という人はたくさんいるが、それは声優ありきのものであって、アイドルではない。

 

 さっくんは、先にも書いたように多くの人がそうだと認めるジャニーズ事務所のデビュー組の“アイドル”だ。

 その堂々と“アイドル”である彼が、かつて“陰キャ”だった彼が、ワンクール以上のレギュラーアニメのレギュラーキャラとしての声優を獲得した時、それは私たち“陰キャ”が憧れ続けていた存在となるのだ。

 

 

陰キャ”から脱し“陽キャ”の象徴であるアイドルとなり、

「アニメヲタク」であることを世間に突きつけつつ、

真のアイドルでありながらレギュラー声優として仕事をする。

 

 

 かつて息を潜めるようにして生きてきた二次元ヲタの、無謀と思われた二次元でしかありえないような設定の理想形を、さっくんは三次元化するかもしれないのだ。

 

 

 彼はその“声”で、まさにそのことを望んでいる。

 もう、現時点でその話がきているかもしれない。

 ともかく、近々、彼はそれを実現するだろう。

 

 

 

 そうしたら、私は堂々と自慢できるようになるのだ。

 かつて私にマウントをとってきていた“陽キャ”どもに。

 

 

「アニメヲタク」だったと。