康二くんは“関西Jr.”だという自覚はあったと思うが、自分が“関西人”だという自覚はなかったと思う。
私は日本人だが、普段「私は日本人だ」と考えながら暮らしてはいない。
日本は、基本的に日本人で構成されていて周囲はほとんど日本人だからだ。
日本に住んで日本人の中にいると、自分が改めて「日本人なんだ」と思うことはあまりない。
同じように康二くんは大阪に住んでいた時に、自分が“関西人”とは思ってなかったと思う。だって、周囲が関西人ばかりだったから。(ハーフでもあるけど、とりあえず割愛)
関西人の中にいて、自分が「関西人だ」とは思わなかっただろうから。
しかし、Snow Manに加入して、自分は“関西人なんだ”と自覚せざるえなくなった。
そして加入当初、そんな自分をどうしたらいいか非常に悩んだのではないか。
関西はツッコむ、ボケるのが普通だ。日常生活だ。
もちろん人によって程度があって、康二くんのボケもツッコみも、マイルドなほうだと思われる。
それは多くの康二くん担が康二くんの魅力を語るときに、まず挙げるのが“優しい”だからだ。
この“優しい”という言葉、人によっては「そう?そうでもないんじゃない?」と数人くらいは思うことが多いのだが、康二くんに関しては、たとえファンでなかったとしても、ほぼ100%の人が“優しい”と表現する稀有な人なのだ。
まさに“優しい”と表現して間違いない人なのだ。
(ただ、ちょっとアホやとは思う。アホゆえ「あちゃー」と思うことはあんで)
もし康二くんが、この“優しい”関西人でなかったら、Snow Manになじんでいくのに、非常に時間がかかった恐れがあった。いや、平均的関西人だったとしたら、なじめなかったかもしれない。
いや、そもそも加入すらしなかったかもしれないと私は思う。
私はデビューしてからのファンなので、それ以前のSnow Manを知らない。
ただ、照くんが『Snow Man ASIA TOUR 2D.2D.』のMCにて「Snow Manは引っ込み思案 だし、先輩のコンサートで MC に出してもらう機会があっても後ろに下がって」と言われたと言及していたこと、あるファンの方が『SnowMan LIVE 2019~雪Man in the Show』にて、康二くん発信でおばちゃんコントを披露したのだが「康二くんがいなかったらありえなかった」と言及していたこと、これらから6人の時のSnow Manは、とても真面目に真摯にライブや舞台をこなしていて、バラエティ的要素はあまり感じられなかったと思われる。
だから、真にボケることなんて当然知らないし、関西人にツッコまれた経験もほとんどなかったのではないか。
しかしジャニーズの性質としてはバラエティの冠番組を持つことが、とくにデビュー組としては必須のような気がする。
ライブや舞台、歌番組、ドラマのみでやっていく方法もあるかとは思うが、ジャニーズの冠番組は基本バラエティだ。
今でこそ関ジャニ∞が『関ジャム完全燃SHOW』というなかなかコアな番組をやっているが(開始当初はもっとバラエティ感があった。『LOVELOVEあいしてる』『堂本兄弟』『新堂本兄弟』は、この前身っぽい感じがする)、国民的アイドル嵐が『嵐にしやがれ』『VS嵐』を活動休止するまでやっていたことを見ると、やはりバラエティの道を通らないわけにはいかないのではないかと思う。
そうすると、どうしてもバラエティ力というものが求められる。
しかも、どうしてもジャッジが甘くなってしまうファンではなく(ファンだからこそ厳しい方もいるが)、ファンではない人から評価されるバラエティ力を持っていないといけない。
Snow Manにその能力がなかったというよりは、そういうことを求められていなかった面が強かったのではないだろうか。
それがバラエティに触れる機会を減らしていたと考えられるが、デビューを見据えた場合、そこを強化する必要があると考えられた。
舞台を数多くこなしていたので、アドリブ力はかなりあったと思う。だけど舞台はある程度ストーリーが決まっているというか、具体的な流れというものがある中で行われるのがアドリブだ。
しかし、バラエティにはそれがない。
ふっかさんやさっくんが頑張っていた面もあるようだが、二人もなかなか優しい人たちなので振り切ることができなかったのでは。
またこの二人がツッコむのはいいとして、ボケた時にツッコむ人がいなかったのではないかと想像する。
そこで“優しい”関西人、向井康二に白羽の矢が立ったのでは。
ここに平均的関西人を投入していたら、あの「疑う」「計算する」ことが得意ではない、しかもほとんどボケ&ツッコみ文化に触れてこなかった、まさに東京Jr.出身のSnow Manはただただ困惑するだけで、とても気まずいムードが流れることになっていたと思う。
でも、彼らは優しくて頑張り屋だから「うまく返せない自分が悪い」などと反省し、笑えないリアクションをしていた恐れがある。
そんなことになったらグダグダだ。
しんどい、しんどい。(byしょっぴー)
お互いの良さを打ち消し合うことにしかならなかっただろう。
だけど康二くんは“優しい”。
そして、とてもバラエティ能力が高い人だ。
康二くんは『まいジャニ』という番組で、多くのゲストの芸人さんにそのお笑いのセンス、バラエティ能力の高さをよくホメられていた。(他の子も含めてね)
私も数年前に数回見る機会があり、康二くんの、他の子のように落としすぎない、蔑まない、皮肉らない“しゃべり”に、スゴイ子だなと思ったことがあった。
あの関西にいて、“優しさ”を保ちながらの笑いを維持し続けるのは難しいところがある。
今でこそツッコまない、けなさない、優しいお笑いが支持されてきているが(しかも、その発信のほとんどは関西人ではない気がする)、康二くんが関西Jr.を牽引している頃はまだ、厳しくツッコめるほうが正しいというか、そういうものだという空気があった。
そのことを彼はもちろんわかってはいたと思うけれど、彼の“優しさ”はそれを許さなかったし、そのような笑いをとることができなかった。
もしかしたら、この“優しさ”が康二くんをデビューから遠ざけてしまっていたのかなと思う面もある。
デビューするということは、どこか計算高さやズルさ、またワガママさを持っていたほうが有利なことが多い気がする。
しかし康二くんには、この要素がほとんどないと言ってもいい。
もしかしたら、この“優しさ”が康二くんがグループになかなか所属できなかった、そしてデビューできなかった原因のひとつだったのかもしれない。
康二くんはバラエティだけでなく、他にもいろいろなことができる才能あふれる人なのだが、しゃべっているわりにはそのことを口にしない。
それよりは、他の子のいいところをアピールしてあげてしまう印象がある。
まるで広報部長だ。(『それスノ』の年始のおいくら企画で実演販売士をあてはめられたのは、ある意味的確だったと思う)
自分のことより、自分が大好きな仲間のことを考えて行動してしまう。
そこがアイドルとしては、最大の魅力であり、最大の弱点でもあったのでは。
そんな“優しい”関西人、向井康二。
ツッコまれる経験なんてなかったSnow Man。
⇒ちょうどいいのではないか?
タッキーが思ったのか、ジャニーさんが思ったのか、運営側が思ったのか、そのすべてが思ったのかはわからない。
でも、Snow Manをデビューさせるためには、康二くんの“優しい”ツッコみが必要だと考えられた。
まったくSnow Manにない要素。
でも、エグいのやらゴツいのやら正統派すぎるのはSnow Manにそぐわない。
Snow Manが素直に笑えるツッコみをし、Snow Manがツッコみやすいボケをすることができる人。
Snow Manのバラエティ力を上げてくれる人。
それが向井康二だった。
その“優しい”ツッコみすら、当初のSnow Manは戸惑う面もあり、康二くんが加減を必死に見計らっていたフシがあるが、もともとアドリブ力が優れていたSnow Manは、個人差はあったものの対応していくようになる。
そして、今となっては康二くんがツッコむどころか、ツッコまれる場面も多々見られるようになった。
しかも、それがメンバー数人からではない。
メンバー全員からだ。(程度の差があるのは個性だ)
康二くんはSnow Manを、ツッコまれるだけでなくツッコむこともできる集団にしてしまった。ときにはボケるようにすらさせた。
ものすごい進化である。
康二くんは『それスノ』とともに、Snow Manを“優しい”バラエティができるグループにしてしまった。
「ゴイゴイスー!」な革命を起こしたのだ。
それは冠番組『それスノ』をもたらし、YouTube、それぞれが出演するバラエティ番組などで発揮されていった。
(『それスノ』の決定はデビュー前だったのではと思われる。サプライズ発表されたのが2020/2/16で、あの時点で九重さんのVTRができあがっていて、さらにはその時点で放送日が決定してたんだし、さらにいえば配信されることも決定してただろうし、少なくとも3、4カ月前には話が決まっていたと考える。もしかしたらデビュー決定する前後から、話は動いていたのかもしれない。そうなると、ますます康二くんのバラエティ力が信じられていたということになる。もしくはもう、そのことを見越して必要人材として康二くんの加入が決まったのかもしれない)
そして、このようなコメントがされることが増えてくる。
「Snow Manって、バラエティの時と、パフォーマンスしている時のギャップがスゴイ!」
かくしてSnow Manの持ち味を殺さないまま、いや輝かせるほどにSnow Manのバラエティ力を上げた向井康二の「ゴイゴイスー!」な革命は成功に終わった。
その革命は『それスノ』をたった1年で地上波へ、しかも深夜ではなく昼の時間帯へと導いた。
YouTubeの会員登録数は100万人を突破した。
Weiboもだ。
康二くんもこの革命の成功を感じたのだろう。(マネージャーに注意されたという面もあるらしいけれども)
「ゴイゴイスー!」という武器を置き、新たに自分のオリジナルな武器を握りしめた。
(アイドルなので必要ないかとは思うところもあるが、関西人なのでいたしかたないと思うところもあり、どっちにしろ康二くんのしたいようにしてほしいというところに落ち着く)
そして、革命の後は新しい国Snow Worldが起こされた。
Snow Manはそれぞれの魅力と個性を磨きつつ、「ゴイゴイスー!」革命によって鍛えられたバラエティ力を持って、9人で肩を組んでさらに自国を拡大していくこととなった。
既存ファンという国民とともに、新規ファンという国民を迎えながら。
バラエティという大国を席巻するために。
国民的アイドルを目指すために。
その中で向井康二は、誰よりも伸び伸びと高らかに声をあげ続けるだろう。
「もみあげ手裏剣!」